コラム

小学生くらいのお子さんの歯並びが気になり始めて近隣の歯医者を受診すると、「もう少し様子を見ましょう。」「大人の歯に生え変わってから矯正治療を始めましょう。」「小学生の間に顎を広げておいて、大人になってからまた矯正治療をして綺麗にしましょう。」と言われたことのある親御さんも多くいらっしゃるのではないでしょうか。

当院で行うマイオブレース矯正は小学生のお子さんの成長を利用しながら行う治療のため、歯が生え変わるのを待つことなく始めることができます。そして、8歳までに当院でマイオブレース治療を始めた方でいわゆる2期治療と言われる成人矯正治療を行う方はほとんどいらっしゃいません。その理由について、詳しくお話しします。

現代のお子さんの90%以上の方が歯並びが悪いと言われており、その割合はここ数十年で増加したとされています。では、なぜここ数十年で歯並びが悪くなってしまったのでしょうか。

私達の3万年前の祖先に、歯並びが悪い人は存在しなかったと言われています。歯並びが悪くなるのは遺伝だと思われがちですが、進化の過程で顎の骨の大きさを決める遺伝子は変化していないことがわかっています。歯並びが悪くなるのは遺伝ではなく環境だと言われています。環境というのは、顔の筋肉の使い方です。成長期に顔の筋肉を正しく使えていないと、顎に余分な力を加えてしまい大きく成長しようとするのを妨げてしまいます。顎が十分に成長しないと歯が並ぶスペースが少なくなってしまって歯並びが悪くなってしまいます。

歯並びが悪くなる習慣が生まれた原因として挙げられるものに、『近代化』があります。これを証明したのが歯科医師のプライス博士という方です。彼は1930年代に活躍していますが、奥様と共に約10年もの期間世界中を旅して、近代文明とそこから孤立した先住民族との口の中を比較しました。

                              W .A.PRICE 著「食生活と身体の退化」

上の写真の左2つは伝統的な生活をしている人々ですが、歯並びがとても綺麗で顎もしっかりしています。右2つは近代的な生活をしている人々で、歯並びが悪く顎も小さいことがわかります。近代文明がもたらした、精製された穀物(小麦など)、精製された砂糖、加工食品や植物油などが用いられた食生活は、虫歯を多発させてしまい、慢性的な鼻詰まりを引き起こし、口呼吸となって顎がうまく成長せずに歯並びが悪くなってしまうことが示されました。

Harvold et al,1981,AJODO

上の写真は、サルで行われた研究をもとに1981年に発表された論文から引用した画像です。

左の写真は鼻呼吸をしているサルのお顔です。このサルの鼻にシリコンを詰めてどのような変化が起こるかが研究されました。結果は、鼻で呼吸ができなくなったサルは口で呼吸をすることが習慣化されてしまい、口はずっと開いていてお顔は長くなり、元は綺麗だった歯並びも悪くなってしまいました。

この研究から分かることは、歯並びが悪くなるのは生活習慣だということです。歯は、口の中で力のバランスが取れるところに並びます。口呼吸・舌の癖・飲み込みの癖があると正しく並ぶことができません。口呼吸は歯並びに最も影響力を持つ習慣で、口周りの発達が活発に起こる3〜14歳において多く見られます。口呼吸を改善しないままでいると、筋肉のバランスが崩れ、歯、顎、鼻の骨に影響が出てしまいます。

綺麗な歯並びのためには、上顎骨の成長が非常に重要です。

これは、上顎骨の成長をグラフに示したものです。歯並びが悪い子たちはこのグラフの灰色のグラフのような成長過程をたどることが予想されますが、小学生の間に水色のグラフのように正しい成長過程へと進めるようにするのが、マイオブレース矯正治療の目的です。さらに呼吸器官や顎の成長がより活発に起こるのは6歳〜8歳ですので8歳までにマイオブレース矯正治療を開始し、口呼吸を鼻呼吸に治し癖をなくすことができると、顎が正しく成長し、歯並びも綺麗になり、成人矯正を行う必要がなくなるのです。

マイオブレース矯正は柔らかい医療用シリコン製のマウスピースとアクティビティというトレーニングで治療を行います。マウスピースに用いられているシリコンは医科では血管の再健にも用いられているものですので痛みは限りなく少なく使用していただけます。お子様の顎の大きさに合わせて歯科医師が適切なマウスピースを選択・調整いたします。

マイオブレース矯正では歯を強い力で縛ったり、顎が成長するスピードを超えるような力をかけたり、本来ならば起こらない方向に無理な力をかけることもしません。アクティビティで呼吸や唇と舌の正しい位置を訓練して、お子さんご自身の力で身体の成長を最大限に引き出し、正しい方向に導くように考えられています。

歯や顎に外から力をかけるだけの治療では、歯並びは綺麗になりますがその後の永続性は不確実です。歯並びが悪くなった原因が取り除かれなければ、口の中の力のバランスは崩れたままなので歯並びが悪い状態にまた戻ってしまう後戻りが起こってしまいます。

マイオブレース矯正は歯並びを悪くする原因を取り除くので、治療が終わった後も自然で本当に使うことができる歯並びを維持することが可能です。

      正しい顔の成長方向       口呼吸などの癖で顔の成長方向は変わります

歯並びには上顎骨の成長が大事であることをご説明させていただきましたが、治療の前後で歯並びだけでなくお顔立ちにも変化が現れます。

上の写真は顔の成長方向を示しています。正しい成長方向は前方ですが、口呼吸などの癖が習慣化すると顔の成長方向は下へ向いてしまいます。

口呼吸と鼻呼吸とで顔の成長の違いが分かる、ある姉妹の顔写真です。左2枚は姉の写真で口呼吸が習慣化していると面長な顔に成長し、口元の突出感を認めます。右2枚は妹の写真で鼻呼吸が習慣化していたので顔は正しく成長しています。

マイオブレース矯正では、下に向いてしまった顔の成長方向を前方に変えます。

当院でマイオブレース矯正を行い、横顔に大きな変化がみられたケースです。頬の部分が前方へ成長していてそれと同時に下顎もついてきています。治療前後でお顔立ちが変化するのは、上顎骨の成長を前へ促すマイオブレース治療ならではです。顎を横だけに広げる治療ではこのようなお顔立ちの変化は見られません。また、成長期に行うからこそお顔の変化も見られるのです。

上顎骨が下向きに成長してしまうと、息の通り道である気道が成長するスペースも確保できなくなってしまいます。夜間のいびき・歯軋り、おねしょ、覚醒や悪夢を見る、寝起きが悪いなどのお悩みがある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。これらも、マイオブレース矯正を行うと改善が見られます。

マイオブレース矯正治療前                治療後  

当院では治療をされる方の気道CTを撮影しています。気道の体積が色分けされて表示され、全てが緑色になっていることが理想ですが、治療開始時は左の写真のように赤色や黄色(体積が少ないことを示します)に染まっていることがほとんどです。上の写真は当院でマイオブレース矯正をされた方の治療前後の気道体積の変化を示します。治療開始前は少なかった体積が、右の写真で示すように全て緑色に染まり十分な体積になりました。

気道が狭いと体内に酸素が十分に行き渡ることができません。それを補うために身体は色々なところに無理をさせています。気道が狭く空気の通り道を確保するために顔を前に出すような姿勢になっている子も多く見かけます。睡眠中の問題も気道の狭さが関係していて、睡眠の質の低下を引き起こし、日中の集中力にも関わってきます。

成人男性に多く見られていた睡眠時無呼吸症候群が近年、お子さんで増加してきていることが問題視されています。成長のために睡眠が非常に大切な時期に質の改善をしてあげることは、お子さんの未来の健康へとつながることだと考えています。

監修者情報

  • 2016年 大阪大学歯学部 卒業
  • 2017年 大阪大学歯学部附属病院第一口腔外科 臨床研修修了
  • 2017年〜2020年 福岡県、山口県にて大型法人施設などで勤務
  • 2021年 真田山歯科勤務

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※休診日:毎月1日・2日

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