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ガミースマイルとは?
ガミースマイルとは、笑った時に歯ぐきが3ミリ以上見える状態のことを言います。当院にも、お子さんのガミースマイルを心配されて来られる方が多くいらっしゃいます。
ガミースマイルになる理由は以下のものがあると考えています。
- 顔が下方向に伸びて成長している
- 笑った時に唇の上がる程度が大きく、歯ぐきが見えやすくなっている
- 歯がしっかり生えていない
顔の正しい成長方向
人は、生まれてから母乳を飲むことで鼻呼吸と正しい嚥下の仕方を習得し、顎顔面は前下方に成長します。しかし、哺乳瓶の使用や授乳時の姿勢、アレルギーなどなんらかの理由で口呼吸が習慣化してしまい舌の位置が下がってしまうと、上顎の前方への発育が不足し、垂直(下)方向の発育となり、舌骨の位置が低位となると舌骨上筋群が下顎を牽引することで、時計回りの回転(クロックワイズローテーション)が起こります。

上顎の縦方向の長さが長くなるので、笑った時に歯ぐきの見える量も多くなってしまうのです。
チークライン・インジケーターライン
上顎骨が下に成長しているかを見る指標として、チークラインとインジケーターラインがあります。

チークラインは専門的にいうと、『鼻の橋部と軟組織に接するよう下瞼の中心から矢状方向に下ろしたラインの角度』を言いますが、横顔を見て頬骨がどのくらい出ているか、鼻の高さと平行に近いかどうか、というのを当院では診断しています。鼻の高さと頬骨の突出度が平行〜15°であれば、顎顔面の成長は良いと言えますが、15°を超えていると、顔が下方向に成長している可能性が高いです。

インジケーターラインは、顔の下方向の成長が何ミリあるかを測ることができるものです。鼻の先端から上の前歯(永久歯)の先までの長さを測ります。年齢によって基準となる数値があるので比較してどのくらい長いかで程度を測ります。当院では治療開始時、治療途中、終了時に必ず計測し、顔の成長方向の進み具合をチェックしています。
ガミースマイルを治す方法として、成人で行われることに
- ボトックス治療
- 上唇粘膜切除術
- 歯冠長延長術
- 矯正治療
- 骨切り外科
などの方法がありますが、効果を感じにくかったり、時間が経つと下に戻ってしまったり、外科処置を伴ったりします。成人は骨の成長が終わっているので、このような方法でしか治すことはできませんが、成長期のお子さんであれば顔の骨の成長方向を変えることで、歯ぐきが見える量を変えることが可能です。
ガミースマイルが治った症例

当院で治療した男の子です。ガミースマイルを気にされて来院されました。7歳から治療を開始し、約3年半で治療が終了し、笑った時の歯ぐきの見え具合が改善しています。
ガミースマイルを治すには、早く治療を開始した方が良いと考えています。上の前歯がまだ乳歯の時に、上顎の成長が下方向になっているのを少しでも前に方向転換してあげることが成功の秘訣です。上の前歯は6歳頃に生え変わります。前歯の生え変わりは、まず下の前歯が揺れて生え変わることから始まりますので、下の前歯の揺れに気づいたときか、もしくはその少し前の5歳頃から上顎を前に成長させましょう。
具体的に何をするのか。
『上の前歯が生える土台の骨の唇側に骨を作る』『顔の成長を時計回りの回転から反時計回りに変えてあげる』
です。
上の前歯が生える土台の骨の唇側とは

写真で黄色い斜線を描いたところです。ここに骨ができると、上の前歯が生え変わる時に、永久歯が前上方に生えてきて、歯頚部(写真青線部:歯と歯ぐきの境目)のラインが上に変わるので、歯ぐきが見える量が減少します。上の前歯の土台の骨が唇側にできるのを促すことができるのは、マイオブレース特有のものです。
その原理は、

マイオブレースで使用する既製のマウスピースは、リップバンパーという口唇圧と頬筋圧を排除してくれるところがあるため、1日に10〜12時間使用している間、上顎の骨に外から加わる力が減って、下に成長するのを防いでくれます。さらに、タンタグという舌を上に置くところがあるので、嚥下時に舌の力で上顎を前に押し出します。マウスピースを口に入れると、唇が前に引っ張られますが、これも刺激となって骨ができる位置を変えるのに役立ちます。


また、当院では上記のようなBB1やBWSという補助装置を用いて上顎の下方の成長を是正しています。これらの装置の使用期間は4ヶ月ほどで、マウスピースと併用して使用します。皆さん使用するわけではなく、顎の大きさ、それまでのマウスピースとアクティビティによる反応具合を見て使用するかどうかを決めます。あくまでも補助的に用いるものですので、マウスピースの使用とアクティビティを毎日しっかり取り組むことが重要です!
唇の使い方がガミースマイルを助長しているケースもあります
顔が下方向に成長するだけでなく、唇の使い方で上顎の歯茎が見えやすくなる場合もあります。

口輪筋と上唇鼻翼挙筋が強く働くと歯茎は見えやすくなります。そのような場合は、顔の成長を改善するだけでなく、唇に特化したアクティビティで唇の使い方を練習します。
ガミースマイルが気になったら早めに治療を開始しましょう
かかりつけの医院でお子さんのガミースマイルを相談すると「上の前歯が生え変わったら気にならなくなるよ」と言われたご経験がある方も多いのではないでしょうか。その内容は50%正解だと言えますが、50%は不正解です。生え変わるタイミングで、歯ぐきが見える量が減るためには、上顎が前に成長しているという条件が満たされている必要があると考えています。歯は骨がないところには生えることができないので、生え変わりを待っていても改善しない場合もあります。さらに、歯は毎日少しずつ生えるので生えている最中に、唇から力が加わり続けるとどんどん押し込まれてしまいます。生える途中に外力が加わると本来生えるべきところまで歯が萌出できない「受動的萌出不全(Altered passive eruption)」という状態を引き起こす可能性も高まります。
お子さんは日々成長していますので、治療開始年齢が後になればなるほど、口呼吸をしている場合はその分顔が下に成長するので、成長方向を変える量も増えますし、10代に入り成長が後半になってくると変化できる量も限られてきますので、ガミースマイルが気になる方は5歳後半〜6歳(上の前歯がまだ揺れていない)頃がマイオブレース治療を始めるベストタイミングです!
監修者情報

院長 堀田有希
経歴
- 2016年 大阪大学歯学部 卒業
- 2017年 大阪大学歯学部附属病院第一口腔外科 臨床研修修了
- 2017年〜2020年 福岡県、山口県にて大型法人施設などで勤務
- 2021年 真田山歯科勤務